令和5年10月18日(水)に技能実習新制度の最終報告書がまとめられました。

来年の国会で法改正がされ、施行は再来年からかと思われますが、主な改正点について解説します。

1.新制度及び特定技能制度の位置付けと関係性等

 これまで技能実習はあくまで実習生を育成し、母国で身につけた技能を生かしてもらうことが目的でした。新制度においてはこの人材育成の目的を残しつつ、「人材確保」というワードが登場し、より実態に即した技能実習制度の発展的解消を強調しています。未熟練の労働者を3年間の就労を通じて特定技能1号の技能水準の人材に育成することを目指しています。

2.新制度の受入れ対象分野や人材育成機能の在り方

 受け入れ対象分野は、特定技能制度における「特定産業分野」の設定分野に限定。人材育成になじまない分野については新制度の対象にはならない。また、特定技能1号への移行に必要な試験等に不合格になった場合は、同一の受け入れ企業等での就労を継続する場合に限り、再受験に必要な範囲で最長1年の在留継続を認めています。

3.受入れ見込数の設定等の在り方

 現行の特定技能制度の考え方にのっとり、受け入れ分野ごとに受入れ見込数を設定していきます。国内労働市場の動向等に的確に対応する観点から、経済情勢等の変化に応じて柔軟に変更されます。

4.新制度での転籍の在り方

 (基本的な考え方)

 新たな制度における転籍については、「やむを得ない事情がある場合」の転籍の範囲を拡大かつ明確化されます。また、一定の要件の下での本人の意向による転籍も認められます。

(やむを得ない事情がある場合の転籍)

 「やむを得ない場合がある場合」の転籍については、その範囲を拡大・明確化し、手続きが柔軟化されます。

(本人の意向による転籍)

 以下の条件のいずれも満たす場合には、本人の意向による転籍も認められます。

 ・同一の受入企業等において就労した期間が1年を超えていること

 ・技能検定(基礎級)等及び日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格していること

(本人の意向による転籍に伴う費用負担)

 本人の意向により転籍を行う場合、転籍前の受入企業等が負担した初期費用のうち、転籍後の受け入れ企業等にも負担させるべき費用については、両者の不平等が生じないよう、転籍前後における各受け入れ企業等が外国人の在籍期間に応じてそれぞれ分担することとするなど、その対象や負担割合を明確にした上で、転籍後の受け入れ企業等にも負担させるなどの措置をとることとなります。

(育成途中で帰国した者への対応)

 育成を終了する前に帰国した者については、新たな制度でのこれまでの我が国での滞在期間が通算2年以下の場合に限り、新たな制度により、それまでとは異なる分野での育成を目的とした再度の入国が認められることになります。

5.監理・支援・保護の在り方

 (外国人技能実習機構)

 受け入れ企業等に対する監督指導や外国人に対する支援・保護機能を強化するとともに、特定技能外国人への相談援助業務(母国語相談等)を担うこととなります。また、労働基準監督署との間で相互通報の取り組みを強化し、重大な労働法令違反事案に対して厳格な対応がされます。

 (監理団体)

 監理団体と受け入れ企業等の役職員の兼職に係る制限の強化または外部者による監視の強化などによる独立性・中立性要件の強化や、受け入れ企業数等に応じた職員の配置や外国語による相談応需体制の強化など、その許可要件を厳格化されます。

 (受入れ企業等)

 育成・支援体制等に係る要件が整備されます。

6.特定技能制度の適正化方策

 新制度から特定技能1号への移行は以下の条件とされます。

  1. 技能検定3級等又は特定技能1号評価試験合格
  2. 日本語能力A2相当以上のレベル(日本語能力試験N4合格など)

※当分の間は相当講習受講も可

 登録支援機関の登録要件や支援業務委託の要件が厳格化されます。

7.国・自治体の役割

 ・入管、機構、労基署等が連携し、不適正な受入れ・雇用を排除

 ・送出国と連携し、不適正な送出機関を排除

 ・業所管省庁と業界団体の連携による受入れ環境整備のための取り組み

 ・日本語教育機関を適正化し、日本語学習の質を向上

 ・自治体において、生活相談等を受ける相談窓口の整備を推進

8.送出機関及び送出しの在り方

 政府は、送出国政府との間での二国間取決め(MOC)を新たに作成し、これにより送出機関の取締りを強化するなどして、悪質な送出機関の排除の実効性を高めます。

 手数料の透明性を高め、送出国間の競争を促進

 受け入れ企業が一定の来日前手数料を負担するなどの仕組みを導入

9.日本語能力の向上方策

 継続的な学習による段階的な日本語能力の向上

 ※就労開始前にA1相当以上のレベル(N5)または相当講習受講

  特定技能1号移行時にA2相当以上のレベル(N4) ※当分の間は相当講習受講も可

  特定技能2号移行時にB1相当以上のレベル(N3)

まとめ

大きな変革としては、技能実習が人材確保の目的を持ち、特定技能1号への移行に齟齬を生じなくさせる点、実習生(仮)が一年以上就労したら転籍が可能になる点、監理団体の許可が厳格化される点かと思います。細かい点についてはこれから整備されていくかと思われますので、今後も新たな情報が出次第、記事を上げていきます。